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読書感想文・メンタルヘルスについてのあれこれ等。「何者でもない」者の日々の憂い

「サピエンス全史」上下巻 ユヴァル・ノア・ハラリ著

読書感想文…教養・自己啓発

 近年は世界史・日本史の学習に熱が高じている。

 本著作は、ジャレド・ダイアモンド氏やマクニール氏の世界史書に並ぶ名著だと自信を持って言える。

 

 まずはじめに断っておきたいのは、この本は「あらかじめ世界史の歩みを義務教育レベルで理解していること」を前提としているのではないか、ということだ。読み進めていくうちにその疑問は解けたが、現代まで続く宗教・戦争など、人間の歴史とは切っても切り離せない「出来事」の大まかな流れくらいは頭にいれておきたい。

 

 あわせて、この本は史実を列挙する本ではない。

 著者が書き表すにあたって、軸とした考えではないかという一文がある。 

「歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を広げ、現代の私たちの状況は自然なものでも必然的なものでもなく、(中略)想像しているよりもずっと多くの可能性があることを知るためだ」

 ハラリ氏はこの考えに基づいて、愚かしくも「サピエンス(賢い生き物)」と自称した私たちの誤った選択、謎に満ちた転換期、判然としている革命の理由などを淡々と解説している。しかし、この解説にあたって難しい用語や専門家しか知り得ない単語を羅列しているのかというと、そうではない。

 

 たとえば、「信用(クレジット)」の概念が誕生についての解説も、中高生であっても理解できる平易な数学的例えで解説をしてくれている。数学的例え、と私は言ったが、これもまた著者が徹頭徹尾本著のなかで重視したものだと思う。

 統計学的データを改めて洗い直すことで、ホモ・サピエンスの不可思議な行動と選択を提示し、読み手に考える余地を与える。

 

 本というものは「それだけで完結することはあってはならない」と常日頃思っているが、それを十分に認識させてくれる一冊であった。

 

 

 おわり。